Project Story 3

「エアポートモール」全面リニューアル

社員一人ひとりの想いが牽引する
一大ショッピングモールへの進化。

成田国際空港内には物販店や飲食店、免税店など約300もの店舗があり、国内有数の売上規模を誇っている。
これら商業施設の魅力をさらに高めることが、“選ばれる空港”づくりに向けた重要な一歩となる。
従来の空港ショッピングのイメージを一新すべく、若手社員たちによる前例のないチャレンジが始まった。

プロジェクト体制
プロジェクト体制の図

KEY PERSON

久保木 修平の写真

施設保全部
建築グループ

久保木 修平

2012年度入社
建築工学専攻 院修
福祉環境デザイン、都市設計

大島 ちひろの写真

リテール営業部
第1営業グループ

大島 ちひろ

2006年度入社
教養学部教養学科
イギリス文化研究コース

Phase 1夢見た仕事を、この手でやり遂げるために。

2012年夏、エアポートモールのリニューアルが発表されたとき、久保木の胸は躍った。幼い頃から空港に憧れ、いつかは空港づくりに関わりたいと建築の道を歩んできた久保木にとっては、自らの夢を叶える絶好の機会。とはいえ、当時は空港内施設の修繕・改修などを担う「施設保全部」に配属されたばかりの新入社員。ただ待っているだけで携われる保証はない。ならば自分から動くのみ。久保木は培ってきた設計ノウハウや、国内外の空港、商業施設を見て回った経験をもとに、成田国際空港の商環境デザインのあるべき姿について、部内への自主的な提案を開始した。

一方、テナント誘致を担う「リテール営業部」にも、参加を熱望する者がいた。当時、免税店運営会社への出向から復帰したばかりの大島である。自ら発掘したテナントとともに商業施設としての魅力を高める仕事に、大きな喜びを感じていた大島だが、出向によってテナント側の立場を経験したことで、理想の商空間づくりへの意欲はさらに高まっていた。その意欲をぶつける舞台を獲得すべく、大島は人気店の情報を率先して収集すると、誘致候補リストとして部内に提案した。

こうした積極性が周囲から認められないはずはない。提案内容から確かな知見がうかがえたこともあり、やがて正式に発足したプロジェクトのメンバーには、久保木と大島の名が含まれていた。

Phase 2一人ひとりの想いが会社を動かし、前例のないプロジェクトが動き出す。

各分野から集まったメンバーは、リニューアルの基本計画づくりに着手した。世界中さまざまな地域から日本を訪れる、老若男女すべてのお客様に喜ばれるのはもちろん、旅行客以外の方も買い物目的で訪れるような、魅力あふれる商空間――こうしたビジョンを共有し、実現に向けた具体策を語り合うなかで、彼らの夢は大きく膨らんでいった。

当初のリニューアル計画の対象は、モール全体の約2割にとどまっていた。久保木からすれば、お客様の動線を踏まえたゾーニング、賑わいを演出する色彩・照明・サインなどをターミナル全体の空間構成から考慮し、全面的に商環境を改善すべきだった。大島にとっても、従来の空港ショッピングのイメージを一新させるためには、できるだけ多くの新テナントを誘致する必要があった。

「モール全体のリニューアルに計画を拡大しよう!」若い二人の熱い想いは、やがてプロジェクト全体に広がり、メンバーの総意として経営陣に打診された。1999年のオープン以来、全面的な改装は前例がなく、コストやスケジュールなども大幅な見直しは困難だ。だが、NAAにおいて、難関への挑戦は若手だけの特権ではない。経営陣もまた、ハードルの高さにひるむことなく、全面リニューアルに“Go”を出した。まさに、社員の熱意が会社を動かした瞬間と言える。

Phase 3前例のない取り組みへの挑戦が、モールを進化させる。

全面リニューアルの決定を受けて、プロジェクトは加速した。「既存インフラを見直して売場面積を拡大しよう」「集客力を高めるため導入部の存在感を強調しよう」ブレインストーミングから生まれたアイデアを実現するため、久保木は素早くパースや図面などのカタチにし、関係各部署の合意を取りまとめた。だが、前例のないことだけに、簡単にはまとまらない。初めて訪れる方も含めて多くの旅行客が行き交う空港施設では、建物の安全性や目的地への誘導性が一般の商業施設以上に重視される。慎重な判断が求められるのは当然と言えた。だからといって、前例を踏襲するだけでは進歩はない。安全性や誘導性を維持しつつ、モール内の回遊性や店舗・商品の視認性を高める工夫はないか――まだ見ぬ解答を求めて、久保木は設計会社や関係する部署、プロジェクトメンバーの意見を取り入れながら試行錯誤を重ねた。

前例のない取り組みに苦戦したのは、大島たちリテール部門も同様だった。これまでの空港になかった靴や帽子、雑貨などの店舗を導入して、バラエティーに富んだ商空間の実現をめざしたものの、社内やテナント企業の反応は「果たして空港で売れるのか?」というものだった。しかし、大島たちには公算があった。それらは決して目新しさだけで選んだわけではなく、旅行者の購買ニーズの多様化や、海外空港での事例などを踏まえたうえで、“空港にあれば喜ばれる商品”として選び抜いたもの。緻密なデータをもとに説得することで、周囲も次第に理解を示し、理想的な店舗ラインナップが実現していった。

改装前後のエアポートモール

工事前
工事中
改装後(モールエントランス)
改装後(モール内)

Phase 4プロジェクトで得られた経験を糧に、彼らの挑戦は続く。

店舗ラインナップや仕様が決定し、工事がスタートした後も、プロジェクトメンバーは妥協することなく改善を続けた。なかでも、個別テナントの要望を代弁する大島と、モール全体の意匠を取りまとめる久保木は、両者を満たす“最適解”を求めて意見交換を重ね、ときには先輩後輩の立場を超えて熱い議論を闘わせた。

こうした粘り強い取り組みの甲斐あって、グランドオープンを迎えた2014年7月、生まれ変わったエアポートモール内は買い物を楽しむお客様であふれていた。「わかりやすく、見やすく、楽しく、安心して」というコンセプトを具現化した創意工夫の数々が、お客様にそれと気づかれることなく、成果を発揮している。お客様の喜ぶ顔、そしてメンバーの想いをカタチにできたことに、久保木は大きな充実感を覚えていた。一方の大島は、無事にオープンを迎えたことに安堵しながらも、自ら出店へと導いたテナント各社を後悔させないよう、各ショップとの日々のコミュニケーションや現場の動向確認を通して売上向上につなげていくこと、また、Webや広報誌、マスコミ対応などを通じてモールの魅力を広く世界に発信していくことを誓っていた。

自ら望んで飛び込んだプロジェクトでの2年間を通じて、二人は創意工夫の楽しさ、社内外の人脈、調整力や交渉力、多くのメンバーと気持ちを一つにする喜び……数え上げれば切りがないほど多くのものを得た。これらを糧に、現在、久保木は次なる施設の改善計画に、大島は新鮮な魅力を保ち続けるための次の展開に取り組んでいる。実現すべき夢がある限り、彼らの、そしてNAAの挑戦に終わりはない。