円卓会議終了後の展開

1.円卓会議終了後のNAAの取り組み

円卓会議の討議については、1994年(平成6年)10月14日に運輸大臣から閣議報告が行われ、同日大臣から以下の内容についてNAAに指示が行われました。

(1)
今後の空港の整備については、円卓会議の結論に則り、まず、平行滑走路を整備すること。
(2)
運輸省が行う「地球的課題の実験村」構想の具体化に関する検討作業に協力するとともに、これに関連し、自ら取り組むことが適切な課題について積極的に対応すること。
(3)
共生懇談会(仮称)の討論の結論については、誠意をもって受け止め、その実現を図ること。また、共生懇談会の円滑な運営について積極的に協力すること。
(4)
空港と地域との共生の視点から、騒音対策の一層の充実や騒音地域の計画的な緑化に積極的に取り組むとともに、地域振興についても貢献するよう努めること。

このように、円卓会議で今後の成田空港の整備を民主的手続きで進めていくことが合意されたことにより、NAAとして円卓会議の結論を最大限尊重してその実現に努めるとともに、これまでの空港づくりの反省の上に立って、誠意をもって話し合いを行うことにより、用地の取得や騒音移転の問題の解決に全力を尽くし、地域と共生できる成田空港の整備に取り組んでいくこととしました。

このためNAAでは、成田空港と地域との共生を目指して、これまで以上に積極的な取り組みが必要であるとの認識のもとに、94年11月1日新たに企画室内に地域共生室と地域環境管理室の2室を設置し、地域共生室は共生懇談会(仮称)と「地球的課題の実験村」への対応、地域振興などに関する事務を、また、地域環境管理室は地球的規模の環境維持や向上に配慮しつつ、空港の整備および運用に係る環境管理に関する事務を、それぞれ推進していくこととなりました。(その後この2室の事務は、現在の地域共生部共生企画グループおよび環境業務グループに引き継がれています。)

また、同年12月22日には、成田空港に係る環境問題について中立かつ専門的な立場から審議をするため、NAA総裁の諮問機関として、地域環境委員会が設置されました。同委員会は、騒音、大気、水質、植生など幅広い環境分野にわたって、それぞれの専門分野の学識経験者に委員を委嘱し、95年1月に第1回の委員会を開催、2007年9月末までに22回の委員会を開催しています。

2.共生委員会等の設置

1994年(平成6年)12月10日に開催された円卓会議拡大運営委員会において、円卓会議の結論に基づいた「成田空港地域共生委員会」と「地球的課題の実験村構想具体化検討委員会」の設置がそれぞれ決定されました。また、円卓会議における議論を踏まえ、空港と地域との共生を実現する観点から「芝山鉄道延伸整備検討委員会」が併せて設置されることになりました。

成田空港地域共生委員会

成田空港地域共生委員会は、円卓会議の結論を受けて空港の整備・運用に関し、空港からマイナスの影響を受ける地域および地域住民に対する円卓会議の合意事項の実施状況について点検を行うための第三者機関として、空港の建設および運用に関する民主的手続きの確保と地域環境の改善を図り、空港と地域の共生の実現に資することを目的として設置されました。

隅谷調査団2名、地域住民6名、自治体4名の計12名で構成(代表委員:山本雄二郎高千穂大学客員教授)され、1995年1月10日に第1回委員会を開催して以来、2007年9月末までに59回の委員会が開催されています。

00年には同委員会の在り方について見直しが行われ01年1月より地域委員を増員し計16名とするほか、従来の業務に加え「地域づくりに資する調査・研究等」にも取り組んでいくこととなり、運輸省およびNAAは、従来の説明者から会議の構成員と位置づけられることになりました。

04年にはNAAの民営化に伴い、同委員会は円卓会議合意事項について建設的な点検を実施し、地域と空港双方向の対話による問題解決に努力することとしました。

なお、運輸省は、96年8月20日に共生委員会から空港整備、地域整備の全体像とその具体的手順を明示するよう要請を受けたことから、同年10月31日、共生策を中心とした「今後の成田空港と地域との共生に関する基本的考え方」を提示し、さらに同年12月11日、地域からの意見、要望を踏まえ、空港整備、地域整備を含めた「今後の成田空港と地域との共生、空港整備、地域整備に関する基本的考え方」を発表しました。この「基本的考え方」の中で、共生策、地域づくり、空港づくりを三位一体のものとして進め、地域との共生の観点を十分踏まえて、00年度完成を目標として平行滑走路等の整備を進めていくこととし、また、次のステップとして、飛行コースを含む成田空港の全体像と手順をとりまとめることとしていました。そこで、98年7月には、「基本的考え方」に示した施策の具体化の状況にも触れつつ00年度を目標とする平行滑走路等の整備を含む成田空港整備の全体像と手順をとりまとめ、「地域と共生する空港づくり大綱」として地域に提案することとなりました。

その後、運輸省とNAAは、50を超える市町村や市町村議会、住民団体等への説明をはじめ延べ100回を超える意見交換を行い、それらを通じて提出された意見を反映させるために、この共生大綱の一部を修正し、地域の理解を得た指針としての新たな共生大綱を98年12月16日にとりまとめました。

地域と共生する空港づくり大綱

地球的課題の実験村構想具体化検討委員会

「地球的課題の実験村構想具体化検討委員会」は、円卓会議で反対同盟から提案があり、その構想について、その意義が高く評価され、国が速やかに当該構想について、関係者の自主性を尊重しつつ、地域とともにその具体化を図り、併せて空港と地域との共生の実を上げることに努めることを目的として設置されました。

本委員会は、隅谷調査団1名、学識経験者3名、地域住民6名、自治体3名、運輸省・NAA2名の計15名(座長:宇沢弘文学士院会員)で構成され、1995年1月24日に第1回委員会が開催されました。発足以来3年余りにわたり検討を行ってきた本委員会は、98年5月1日に開催された第22回の委員会において報告書「若い世代へ ― 農の世界から地球の未来を考える ―」を発表し、解散しました。

この報告書では、地球環境問題などの現代工業文明が抱えている問題を解決するには循環を基礎として自らを律していく農的価値を考え方のものさしとすることが必要であり、今後の空港づくりについても、現実の社会的要請とこのような考え方との間で緊張感を持って行われるべきとされています。

隅谷調査団においては、この委員会の終結や共生委員会の活動などを受けて、「成田空港問題は社会的に解決され、今後関係者が進んでいく道筋が理念的にも示されるところとなった」との所見を発表しました。

また、運輸省およびNAAは、報告書の考え方を受けて、成田空港の建設・運用にあたって循環を基礎とした農的価値の視点を取り入れ、より一層環境や農業に配慮した空港づくりを行っていくべきであると考え、98年5月27日「エコ・エアポート基本構想」を発表しました。