地域と共生する空港づくり大綱

1.基本的な考え方

(1)成田空港問題の解決

成田空港の建設の歴史においては、国と地域との間で、そして、地域の中でも賛成派と反対派との間で対立の構造が深刻化することになったほか、過激派の介入を招いたこともあり、いわゆる成田空港問題が発生しました。

この成田空港問題については、学識経験者グループである隅谷調査団をはじめ運輸省、公団、反対派農民、関係自治体、民間団体の参加のもと、成田空港問題シンポジウムが平成3年11月から15回にわたって開催され、真摯な議論が行われました。その結果、成田空港問題の原因として国側の一方的な空港づくりの手法に問題があったことが指摘され、国側はこの指摘を重く受け止め、対立構造を根本的に解決することが全ての基本であると認識して、収用裁決申請の取下げなどを行いました。

引き続いて実施された成田空港問題円卓会議において、空港と地域との共生に関する問題について約1年間12回に及ぶ関係者の真剣な議論の結果、平成6年10月、隅谷調査団の所見が出され、この所見を関係者全員が受け入れました。

隅谷調査団の所見では、国側が平行滑走路と地上通路を整備することは理解し、その用地の取得はあくまで話し合いによること、横風用滑走路の整備については平行滑走路が完成した時点であらためて地域に提案することとされました。また、後に円卓会議の合意事項として明らかにされた環境対策について、第三者機関たる成田空港地域共生委員会の点検のもとに実施すること、空港反対運動の中から提唱された地球的課題の実験村構想についてその具体化のための検討作業に取り組むことなどが提言されました。

すべての円卓会議の関係者はこの隅谷調査団の所見を受け入れたことにより、これまでの対立構造の解消が図られ、今後は地域と空港との共生という理念のもとに国・公団は地元自治体・地域の方々のご協力を得ながら、新しい共生の時代をつくっていくことになりました。シンポジウム・円卓会議の結論において、国は強制的手段を用いないことを約束しましたが、これは国・公団はもちろん反対同盟もまた誠意ある話し合いにより問題を解決するという責務を負ったことを意味するものと受け止めるべきであると考えています。

この円卓会議の結論を受け、国・公団はこれまでの反省の上に立ち、地域と共生する成田空港の整備をめざして、共生委員会の点検のもとに円卓会議の合意事項の実現に努めるとともに、地権者の方々と誠心誠意話し合いを進めてきました。さらに、平成10年5月には、円卓会議で残された課題であった「地球的課題の実験村」構想具体化検討委員会での検討が終結し、報告書が出されました。そこでは、農業と空港の関係を考える中で、地球環境問題等の現代工業文明が抱える基本的な諸課題の解決に取り組む必要性を認識し、そのための新しい運動を展開していくべきであるとの考え方が示されました。

そして、これらの動きを受けて、隅谷調査団からは、「成田空港問題は社会的に解決され、今後関係者が進んでいく道筋が理念的にも示されるところとなった」との所見が発表されました。

国・公団は、これまで示されてきた話し合いによる解決という道筋に従って、平成8年12月に発表した基本的考え方に基づく各種の施策の具体化などに取り組んでまいりました。

本年7月には、基本的考え方に示した施策の具体化の状況にも触れつつ2000年度を目標とする平行滑走路等の整備を含む「成田空港の整備の全体像と手順」をとりまとめ、地域に提案させていただきました。その後、50を超える関係自治体をはじめ、住民団体等に直接ご説明させていただく機会を得ました。その際に頂戴した数々の貴重なご意見も踏まえ、ここに、これからの具体的指針として、「地域と共生する空港づくり大綱」をとりまとめさせていただきました。

(2)これからの空港建設・運用にあたっての基本的な理念

これからの空港の建設・運用にあたっては、何と言っても地域と空港との共生の実現を図ることが大切であり、そのためには地域の方々と十分に話し合い、それを通じて地域との信頼関係を築くことが重要です。円卓会議の場で示しましたとおり、空港づくりは地域づくりでもあり、国と地域との共同事業であると考えています。国・公団はこの空港づくりの原点に立ち返り、「地域と共生する空港」の実現に向けて、共生策、空港づくり、地域づくりをいわば三位一体のものとして相互に密接に関連させつつ進めてまいります。

(1)共生策

地域と空港との共生という理念は、成田空港がこの地にある限り続く永遠の課題です。そのなかでも、まず円卓会議の合意事項を着実に実施することがすべての基本であると考えます。

また、単に円卓会議の合意事項を個別に実施するのみならず、地域と空港との共生の理念の実現をめざして、現滑走路からのマイナスの影響を軽減することに万全を尽くすとともに、さらに平行滑走路などの整備に伴い新たにマイナスの影響を受ける地域についても、問題への対応が後追いになることのないよう万全を期してまいります。

地域の農業振興についても、「地球的課題の実験村」構想具体化検討委員会における3年余りの議論を踏まえ、本年5月に発表したエコ・エアポート基本構想に則して取り組んでまいります。

(2)空港づくり

現在、世界は政治・経済・文化的分野のみならず日常的な市民の暮らしの分野においても、深く他の国々と結びついています。国際航空・空港はこのような広範な国際的相互依存関係の進展に大きく貢献してきました。我が国の国際的地位にふさわしい外交、文化、経済など広い分野で質の高い国際的な活動を支えていくためには、長期にわたり安定的かつ発展的に国際航空需要に対応できるよう首都圏において拠点的な空港整備が必要になります。

このため、成田空港については、21世紀を見据え、国内線との連携も念頭におきつつ国際交流の拠点にふさわしい空港となるように、話し合いにより2000年度を目標として平行滑走路を整備するなどの空港づくりを進めていきたいと思います。

さらに、エコ・エアポート基本構想に則して、環境への負荷や資源・エネルギー消費をできる限り小さくした循環型の空港づくりをめざします。
 また、地球的課題の実験村についても、地域からの実験村運動に対して、国・公団としても協力してまいります。

(3)地域づくり

地域と空港との共生を実現していくためには、共生策のほかに空港の持つ可能性や活力を活用して、空港周辺地域の均衡ある発展を促進するための地域振興策が必要であると考えます。

地域づくりは、千葉県が策定した成田空港周辺地域振興計画などに基づき、地元自治体や地域の方々が中心となって行われるものですが、国・公団も空港づくりは地域づくりであるという基本的な考え方に立って、地元自治体や地域の方々と一体となって取り組んでまいります。