地域と共生する空港づくり大綱

(1998年12月16日とりまとめ)

  1. 基本的な考え方
  2. 地域と共生する空港をめざして
  3. 国際交流の拠点にふさわしい空港づくり
  4. 地域づくり
  5. おわりに
  6. 【参考】エコ・エアポート基本構想

3.国際交流の拠点にふさわしい空港づくり

(1)施設整備計画の目標

現在、成田空港においては、国際線旅客が年間2500万人、国際航空貨物も年間160万tにまで達しており、現滑走路はほとんどその処理能力の限界に達しています。そのため、成田空港の整備にあたっては、首都を中心とする大都市圏を控え多岐にわたる国際交流を質的にも量的にも長期にわたって支えられるよう、国際交流拠点にふさわしい空港づくりが必要となっています。
国・公団は、環境にも配慮することにより、成田空港が、世界の航空会社ばかりでなく空港利用者や地域の方々にも心から望まれる空港となることをめざしたいと考えています。

(2)平行滑走路及び地上通路

平行滑走路(2500m)は、話し合いにより2000年度を目標として整備を進めます。現滑走路(4000m)と組み合わせて使用することにより、国際交流の拠点として成田空港に求められる機能を果たすことが可能となります。
現在の飛行回数は年間約12万5千回にまで達していますが、円卓会議での合意により、平行滑走路の供用開始時における飛行回数は20万回となっておりますが、騒音対策は、総飛行回数22万回をベースとして万全の対策を実施することとしています。
また、横風用滑走路として計画している部分は、現在の滑走路と平行滑走路をつなぐ地上通路として整備します。

(3)旅客ターミナルビル・エプロン

・国際線旅客ターミナルビル

成田空港では、2つの旅客ターミナルビルが供用されています。第1旅客ターミナルビルは、建設後20年以上が経過し、施設の老朽化が進み、時代のニーズにも合わなくなってきているため、全面的に改修を行っています。改修後は、第2旅客ターミナルビルと同等以上の旅客サービスレベルが実現することとなると考えています。
第2旅客ターミナルビルは、新しいターミナルビルであり、高齢者対策なども施され、質の高いサービスができるように、諸施設の充実が図られています。
改修中の第1旅客ターミナルビルはその将来需要を見込んで計画していますが、第2旅客ターミナルビルについても、今後拡張が必要になるものと思われるため、現在準備を行っているところです。

・国内線旅客ターミナルビル

将来の国内線の充実にあわせて、国際線搭乗ゲートを国内線と兼用できるようにするなど国内線旅客ターミナルビルの機能の拡充を図ってまいります。
また、京成電鉄及び芝山鉄道が乗り入れる東成田駅と国内線旅客ターミナルビルを結ぶ連絡通路を設けるとともに、周辺地域などからの車の利用者のために同ターミナルビルの前に国内線専用の乗降場を設けることにより、利用者の利便性の向上を図ります。

・エプロン

現在、成田空港には同時に112機が駐機できるエプロンがありますが、平行滑走路の供用開始後は不足すると考えられますので、徐々にエプロンを増設し、将来的には、150機前後が駐機できるエプロンを確保したいと考えています。エプロンの整備にあたっては、航空旅客の利便性を考慮して、旅客ターミナルビルから直接航空機に搭乗できるゲートをできるだけ多く確保したいと考えています。

(4)貨物施設

現在、成田空港の航空貨物の取扱量は世界の空港でもトップクラスの地位を保っていますが、これを取り扱う貨物施設は拡張を重ねてきており、既に、空港敷地内での拡張の余地はほとんど残っていません。

一方、空港周辺には成田空港での貨物地区の狭隘さを補完するような形で、民間の貨物取扱業者の物流施設が数多く設置されています。
今後は、増大する貨物需要に対応するため、既存貨物取扱施設の拡充や老朽化が進む施設の建て替えなどによる能力増強を行います。さらに、貨物地区の隣接地に千葉県が計画している成田国際物流複合基地の早期完成に協力してまいります。

(5)給油施設

成田空港で使われる航空燃料は、千葉港頭石油ターミナルにタンカーなどで搬入されたあと、パイプラインで空港まで運ばれます。千葉港頭石油ターミナルについては、受入設備の処理能力が限界に近づいているため、需要の動向を勘案しつつ受入設備の拡充を図ります。空港内には、パイプライン等のシステムが万一停止しても7日間程度は航空機に給油できるように備蓄タンクを整備することとしています。そこで、今後の需要増加に対応するため、平行滑走路の北側隣接地に備蓄タンクの増設を計画しています。

(6)その他空港隣接地における関連施設

空港周辺には公団が騒音用地などとして取得して所有している土地があり、その一部は農地などとして活用していただいていますが、残る土地は空地として管理しています。このため、これらの土地を活用して消防訓練施設などの空港機能を補完する施設を配置していきます。

(7)横風用滑走路

横風用滑走路の整備については、円卓会議で合意したとおり、平行滑走路が完成した時点であらためて地域に提案し、その賛意を得て進めてまいります。

(8)平行滑走路の供用に備えた環境影響の把握等

平行滑走路等を整備することは、騒音のみならず大気質、水循環への影響、緑の減少、電波障害など環境に様々な影響を与えます。従って、公団では今回の平行滑走路等の整備にあたって、学識経験者で構成される地域環境委員会のご指導を得て、「環境とりまとめ」を作成しました。それは、空港の供用と空港の建設工事に伴う騒音、大気質、水質、自然環境など様々な環境側面について、今後講じる環境対策とあわせて現状と将来における環境影響の程度を体系的に把握したものです。

それによれば、まず、航空機騒音について、現滑走路においては、平行滑走路が整備されることにより飛行回数が減少することに加えて低騒音型の機材の利用が進むと考えられることから騒音レベルが低減されると推察されます。平行滑走路においても、75WECPNLの騒音が及ぶ範囲が、騒音対策を実施している騒防法第一種区域を超えないと予測しています。

大気質についても、航空機の飛行回数の増加により硫黄酸化物や浮遊粒子状物質等の発生量は増加しますが、基本的には空港関連以外の発生源による影響が大きい浮遊粒子状物質を除いて大気汚染の環境基準内に収まると予測しています。しかしながら、大気質に及ぼす影響を監視するため常時監視観測点を増設するほか、大気汚染物質の排出を抑制するためにGPUの利用を促進することにより、APUの使用を抑制するなどの取組みを進めてまいります。

水質については、下水排水は空港専用下水道で処理しているほか、雨水排水についても、開港以来第2旅客ターミナルビル地区の供用や飛行回数の増加にもかかわらずこれまでの測定結果でほとんど変化が見られないことから、平行滑走路供用により飛行回数が増加しても水質が大きく変化する可能性は少ないと考えています。しかしながら、下流河川に大きな影響を及ぼすことのないよう、さらに水質の監視の充実に取り組みます。

また、自然環境について、植生の変化を定量的に予測することは困難ですが、今後の空港整備によって自然の緑の面積が約0.3・2減少すると見込まれます。空港建設で多くの緑が失われたことからこれまでも成田空港周辺緑化基本計画を推進してきているところであり、今後とも豊かな緑の回復をめざします。

空港建設工事に伴う騒音や水質への影響等についても周辺地域の環境に大きな影響を与えないよう、施工方法等を検討し実施してまいります。

この「環境とりまとめ」の作成にあたっては、これまでに地域の皆様からお寄せいただいたご意見、ご提案をできる限り反映させていただきましたが、さらに今後、平行滑走路の整備に向けて、空港周辺の環境の声に耳を澄まし、皆様からのご意見、ご提案を反映させながら環境対策を実施してまいりたいと考えています。

なお、「環境とりまとめ」の具体的な内容については、空港情報センターや各情報コーナーにおいてご覧いただくことができます。

(9)平行滑走路供用開始後の標準飛行コース

平行滑走路が完成した場合の標準的な飛行コースについては、別添4の図に示すとおりとさせていただきたいと考えております。

これらの飛行コースは、安全かつ円滑な航空機の運航を確保するとともに、地域に与える影響を極力小さくするとの考え方に基づき設定したものです。具体的には、現在既に設定されている飛行コースを引き続き使用するほか、平行滑走路に係るコースの設定については、隣接する羽田空港等の空域に影響を及ぼさない範囲で、現行の飛行コースを基本として設定しました。また、航空機数の増加、特に到着する航空機の増加に伴い、安全確保等のために別添4の図に示すように面的な飛行を指示する場合があります。離着陸時に際し九十九里から利根川までの間は直進上昇・降下とするなど、これまでの地域との約束事項を引き続き遵守してまいります。

なお、平行滑走路の供用に伴い必要となる騒音対策、電波障害対策については、これまでにも地域の要望を踏まえて順次実施してきているところですが、これらの対策が後追いとならないよう、今後とも万全を期してまいります。

※文章中の別添については、省略させていただきます。

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